万龍

深夜一時過ぎ。通りを歩けば、ぼんやりと見えてくる赤提灯。まだやってる、ほっと一安心。店の外まで広がっている豚骨スープの匂い。暖簾をくぐると、親父さんが「いらっしゃい」と優しく迎えてくれる。AMラジオのこもった音を聴きつつ、お冷は自分で注ぐ。今日は唐揚も食べようかな、とか自分のお腹と相談する。ご紹介したいのは小倉北区古船場町、万龍。人に教えたいようで教えたくない、でもちょっと教えたい夜だけのラーメン屋。

注文を伝えてしばし待つ。営業時間が二十時から翌三時ということもあって、零時を過ぎると様々な先客がいる。上がったキャバクラのお姉ちゃんやバイト帰りの学生、飲み会後のサラリーマン、素性不明の酔っ払い。僕も大学時代、バイト帰りはここで夜食を食べていた。今日一日の愚痴をここで吐き出したりしつつ、みんな親父さんが作るラーメンを啜っている。店のノスタルジックな雰囲気も相まって、この小倉っぽさが僕は好きだった。

肝心のラーメンは細すぎず太すぎずの丁度いい麺に、まったりとコクのある豚骨スープ。見た目ほど脂っこさやしつこさはなく、豚骨の強烈な部分を全面に押し出す博多とは違い、味にグッと奥行きがある。普通のラーメンを頼むと、具はネギとチャーシューのみ。もっと攻めたい方は、卓上のニンニク油を次の日後悔するほど入れるといいだろう。替え玉はないが大盛りが用意されている。

胃袋に自信のある方にはもう一つの人気メニュー、唐揚もオススメしたい。中華料理店で出てくるような本格派の鶏の唐揚。下味とスパイスがガッツリ効いていて、ラーメン屋のサイドメニューとは思えないほどジューシーで食べ応えがある。そして一つ一つが大きく、とかく量が多い。小食同士であれば、三人で分け合ってもよさそうなくらいのボリューム。成人男性二人で食べても、だいだい最後の一つは譲り合いになる。

話は少し脱線するが、この店に魅了された友人がいる。小倉を旅行の折にこの店を紹介したら、どっぷりとハマった。彼は関西に住んでいるがそれ以来、年に四回は小倉に足を運びここを訪れている。今は僕も小倉には住んではいないが、その時は必ず呼び出される。北九州に愛人がいると社内で噂になっても仕方がない。その愛がラーメンに注がれているなんて誰も思っちゃいないだろう。

今年はまだ彼が一度も来ていない。僕も一月に行ったっきりだ。親父さんは元気だろうか。再訪の暁には他の客と同様、他愛もない話をしながら夜中に麺を啜りたい。

※今は営業時間が変更になっている可能性有。

(作:にとこが5人様)

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